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信用リスク管理:正しいソリューション選びで差が出る(パート 6/6)

2021年前半、アジアの貿易は高い成長率を維持しています。長期的な視点では将来の展望に疑いの余地はないものの、アジアを発生源とする新型コロナウイルスが短期的な成長展望に影を落としています。

また、国際貿易においてもリスクは無関係ではありません。米国と中国の摩擦は続いており、パンデミックと相まって、長年にわたって確立されてきた世界的なサプライチェーンに寸断が生じています。また、パンデミックの間、経済を支えてきた景気刺激策が縮小すると、今後1年から1年半の間に世界中で資金繰りが悪化し、経営破綻が急増するのではないかと予想されています。

また、気候変動のほか、先進国と途上国の所得格差や情報格差の拡大などの課題にも世界は直面しています。こうした問題については、国際貿易の長期的将来の展望にも大きな影響を及ぼすほか、企業が日常的に直視している信用リスクとも関係があるため、ビジネスの安全性を確保するためにも注意を払う必要があります。

自家保険に加入するか否か

自家保険は、企業が信用リスクを管理する手段の一つで、アジアを含め、世界中の企業が、コスト削減やリスク管理プロセスの管理の強化、あるいはリスクはないという考えからなど、さまざまな理由で自家保険を選択しています。ほとんどの企業は最終的に、自家保険は費用効率の高い選択肢ではなく、デメリットも多いことに気付きます。

信用リスク管理を社内で行う場合、多額の経費が必要になり、企業の成長に投資できたはずのリソースを無駄に消費してしまうことにもなりかねません。さらに、売掛金は貸借対照表(収支明細)の重要な構成要素であり、運営資金が未払い金によって長期的に拘束されるというリスクを犯す余裕はないでしょう。特に、アジアにおけるB2B債権管理に関する最新調査で明らかになりましたが、近年は、延滞や回収不能の件数が増加しています。

また、信用リスクを正確に評価することは、企業が有していない専門性を必要とする困難な作業です。信用リスク評価とは、単に企業が取引先の信用力を評価することではありません。独自のアドバンテージや市場での地位に加えて、為替リスクや地政学的リスクなど、さまざまな外部要因を考慮して評価しなければならないのです。その結果、挑戦をしようとしている企業にとっては、与信限度額を慎重に設定しすぎると、成長の妨げになり、逆に設定が甘いと損失が大きくなる可能性があります。

運用条件や取引要件に応じてさまざまな選択肢があるため、企業はこうしたタスクを自ら引き受ける必要はありません。その中でも、最も包括的で費用対効果の高い信用リスク管理ソリューションの一つが、信用保険です。

ここでは、最適な選択の参考になるよう、他の一般的なリスク管理ツールとの比較を紹介します。

他の選択肢と比較した場合の信用保険の位置づけ

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数十年にわたって好まれている信用管理ソリューションが 信用状(L/C)です。しかし、信用保険は補償対象のすべての取引に適用されるのに対し、取引案件ごとにL/Cを取得するのは手間がかかるため、有用性が限られています。また、信用保険の手数料は請求額の0.1%~0.4%であるのに対し、L/Cは請求額の2%と高額です。

また、信用保険に加入することで、特定の産業に関わる取引リスクや買い手の国の政治的リスクなど、保険会社の持つ専門的な知識と経験にアクセスすることができます。こうした安心があることで、潜在的な損失を回避または最小限に抑え、新しい市場に進出して収益を向上させることができます。

短期的なキャッシュフローのギャップを埋めることが企業の主要要件である場合、インボイスファイナンス(売掛金担保融資)が賢明な選択でしょう。通常、リスクの軽減と運転資金へのアクセスの改善は切り離せないため、インボイスファイナンスと信用保険の組み合わせが最適なソリューションになります。

インボイスファイナンスは、売り手が買い手の請求書の決済を何週間も待つことなくキャッシュフローを確保できる一方で、信用保険は、関係者がリスクを明確に把握し、買い手の債務不履行時に保護することができるため、これらの2つのアプローチが理想的です。

また、信用保険は資金調達のきっかけにもなります。評価の高い保険会社の保険適用対象となることで、高額な資金を高いレートで提供されるため、その結果、資金調達の全体的なコストを削減できる可能性があります。

銀行保証は通常、初めての取引相手との単発の大口取引を円滑に進めるのに利用されます。しかし、銀行が保証を提供するのは財務状況の良い企業に限られるため、取得の障壁が高いのが難点です。また、政治的リスクにも適用されないのもデメリットと言えるでしょう。

信用保険は、リスク評価、信用保護、債権回収のソリューションを包括的に提供するもので、通常、商業リスク(長期にわたる債務不履行や倒産)やほとんどの政治的リスクに関して、負債額の90%までを補償します。

包括的な補償を求めるなら、保険会社は売り手のすべての売上債権に適用される包括補償をすすめるのが一般的です。不測の事態に起因する財政的損害を含め、合理的な保険料率で包括的な保護を受けることができるからです。

まとめ

以上のように、今回紹介した各リスク管理ソリューションは、それぞれニーズがあり、国際貿易において活用されていますが、信用保険は企業のリスク管理戦略にとって不可欠な一部になってきています。取引信用保険についての詳しい説明は こちらをクリックしてください。

信用リスク保険は、包括的な保護と保険会社の膨大なリーチとリソースへのアクセスを費用対効果の高い方法で提供するだけではありません。信用リスク保険を活用すれば、取引先との良好で、持続的な関係を構築して、企業成長の可能性を引き上げることができます。これは、急速に変化し、オープンアカウント取引が主流となりつつある国際ビジネス環境で成功する上での重要な要素と言えるでしょう。

当社のブログシリーズでは、これらの信用リスク管理ツールの長所と短所について、詳しく紹介しています。

1/6: 世界中の貿易を牽引する信用リスク管理商品
2/6: 信用状(L/C):安全な決済を行うための従来のソリューション
3/6: インボイスファイナンス(売掛金担保融資):キャッシュフロー管理の代替策
4/6: 銀行保証:高額取引の円滑化とセキュリティの強化
5/6: 信用保険:包括的かつ費用対効果の高いリスク管理ソリューション
6/6: 信用リスク管理:正しいソリューション選びで差が出る

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