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信用保険: 包括的かつ費用対効果の高いリスク管理ソリューション(パート 5/6)

信用保険は、商品やサービスの対価を買い手が支払えない場合に発生する損失から企業を保護する包括的かつ費用対効果の高いリスク管理ツールです。

信用保険は、売り手が安全・安心な方法でオープンアカウント条件(国際貿易の取引で好まれつつある形態)で取引できるようにすることで、ビジネスの拡大を支援します。企業のビジネスモデルに合わせてカスタマイズできるソリューションなので、市場や地域を問わず、さまざまなサプライヤーのニーズに応えることができます。

ここでは、主な信用保険商品の種類と補償範囲を簡単に紹介します。

  • 包括補償

信用保険の一般的な形態であり、最大手の多国籍企業から中小企業まで対応します。国内および海外の売上保護に適用し、信用で取引を行っている売り手のすべての顧客ベースを対象にできます。

  • 選択型ポートフォリオ補償

これは、企業の収益の大部分が一社、または少数の大口顧客との取引によるもので、こうした重要な顧客の債務不履行を補償する保険を欲している場合に適しています。

  • プロジェクトベースのリスク補償

特定のプロジェクトの期間に合わせて設計された信用保険で、数年間に及ぶ長期的な保護を提供します。

このように汎用性と柔軟性に優れているため、どのような形態や規模の企業でも、信用保険を他のソリューションと組み合わせ、キャッシュフローやリスク管理のプロセスを高度化・改善することができます。

信用保険の仕組みとは

信用保険はまず、顧客の評価を行い、リスク格付けをします。これはバイヤー格付けとも呼ばれ、支払い滞納のリスクを調査し、保険会社が補償するレベルや条件を決定する際の判断材料になります。

通常、負債の90%までを補償するこの保険は、特定の顧客とのすべての取引に適用され、破産、長期債務不履行、取引法の変更など、顧客の支払い能力に影響を与えるさまざまな事象に加え、テロ行為や戦争、輸入許可の取り消し、外貨の利用不可など、契約の履行を妨げる政治的リスクをカバーします。また、保険約款に記載されているその他の不払いの原因にも適用されます。

ほとんどの与信限度額は、被保険者の業界で一般的な60日、90日、180日などのオープンアカウントの取引条件に沿って付与されます。保険料は、選択した保険の種類、業種、保険の適用対象となる年間売上高、不良債権の発生履歴、社内の与信管理手順、顧客の信用度など、さまざまな要因によって異なります。

不払いの補償とそれに伴う債権回収サービスの保険料は、平均して請求額の0.1%から0.4%であり、他のリスクやキャッシュフロー管理ツールのコストよりも大幅に低くなっています。

また、買い手が債務不履行や支払い不能に陥った場合、売り手は速やかに補償を受けることができるため、企業の日常業務に大きな支障をきたすことなく、資金提供者や株主に安心感を与えることができます。

信用保険の仕組みについては、こちらの動画をご覧ください。

 

信用保険を選ぶ理由とは

取引信用保険への加入を検討する際、不払いのリスクに備える必要性があるのか疑問に思う企業もあります。しかし、未払いの売掛金は、企業の貸借対照表(収支明細)の資産の一部を占めているため、顧客の債務不履行による影響が甚大であることを認識することが重要です。一方で、信用保険に加入した企業からは、そのメリットはコストをはるかに上回るという声が聞かれます。この保険に加入することで、不払いのリスクに囚われることなく、顧客との関係を深め、新規市場に参入できるようになり、不良債権リスクなく事業を拡張することによって得られる収益で、保険のコストを実質的に賄うことができるのです。

国内の取引だけでなく輸出も含めた不払いのリスクを保険会社に移転し、安心して成長を目指すことができるというのが最大のメリットでしょう。また、信用保険は政治的なリスクだけでなく、信用力リスク(長期にわたる債務不履行や倒産)にも適用されるため、売り手は、これまで敬遠していた新しい取引関係や新しい市場に参入することができます。信用保険の最大のメリットは、常に存在するリスクから売り手を保護することです。つまり、それによって企業の地位が確立され、新しい市場で成功した後も有用であり続けるのです。

信用保険は、不払いが発生した場合に迅速に補償するだけでなく、十分な支払い実績のない顧客を選別することができるため、企業の運転資金管理システムを支える重要な役割を担っています。企業の生命線であるキャッシュフローを効率的に確保し、販売後の支払いまでの時間を短縮すると同時に、収益と資本を保護することで、企業の成長に向けて資金に充てることができるからです。

 Atradiusの支払動向バロメーター調査によると、B2Bの支払遅延によって運転資金が長期的に拘束されるリスクは増加傾向にあり、信用保険は、単に未払いを補償するだけでなく、重要な役割を果たす可能性があります。たとえば、保険に加入している売り手に対しては、銀行が貿易金融商品を提示しやすくなるため、低い金利で資金を調達する後押しになります。

また、信用保険に加入しておけば、売り手は信用限度額が承認された後は、管理コストをかけずに国内外の買い手と継続的に取引を続けることができます。また、売り手は自社の要望に合わせて保険をカスタマイズすることができます。これには、プレクレジットリスクに対する追加補償(出荷前リスク付保)も含まれます。つまり、買い手に合わせた特注商品を販売する前提では、買い手が支払い不能、または売り手が納品を履行できない状況に陥ってしまっては、転売が不可能になることがあるので、この補償がメリットをもたらします。

また、保険会社のグローバルなリソースや地域の専門知識にアクセスできるのも、売り手にとってメリットです。たとえば、保険会社は世界各地に拠点を持ち、何百万もの買い手の詳細な財務情報にアクセスできるため、買い手を事前に調査したり、適切なレベルの与信を行う判断基準になります。また、特定の市場における政治的安定性や経済力、さらには支払い処理に必要な外貨準備金の有無など、運営上の問題を売り手が評価するのにも役立ちます。

さらに、信用保険会社には、社内の回収部門のほか、弁護士や債権回収業者のネットワークがあり、これを利用して債権を回収することができます。このサービスは通常、保険契約の適用範囲です。保険に加入しているサプライヤーから信用を得るには、ポジティブな信用格付けが不可欠であることは周知されているため、債務者は、ネガティブな格付けや信用補償の取り下げにつながる可能性のある債務不履行を回避しようとします。売り手が支払いを回収する支援を求めると、債務は最終的に全額回収され、損失は回避されるのが、ほとんどのケースです。

信用保険は、地域やセクターごとのリスクに関する専門的な知識に裏打ちされたリスク評価、保護、債権回収ソリューションを含む完全なパッケージで、売り手の財務的安定性と成長を促し、新しい顧客や市場へのサービス提供能力を高めることができます。

まとめ

アジアをはじめとする世界の新興市場では、企業のグローバル化や国内市場の拡大に伴い、信用保険の普及が進んでいます。これらの地域の企業は、国際貿易に関して高度な知識を身につけ、国内市場以外にも勢力を伸ばしつつあるからです。また、こうした地域の企業の中では、 リスク管理機能を改善するため 、信用状(L/C)、インボイスファイナンス(売掛金担保融資)、銀行保証などのニーズに応じたツールとともに、信用保険などの総合的なソリューションを利用するメリットが認識されつつあります。これらのソリューションについては、以下のリンクをご覧ください。 

当社のブログシリーズでは、これらの信用リスク管理ツールの長所と短所について、詳しく紹介しています。

1/6: 世界中の貿易を牽引する信用リスク管理商品
2/6: 信用状(L/C):安全な決済を行うための従来のソリューション
3/6: インボイスファイナンス(売掛金担保融資):キャッシュフロー管理の代替策
4/6: 銀行保証:高額取引の円滑化とセキュリティの強化
5/6: 信用保険:包括的かつ費用対効果の高いリスク管理ソリューション
6/6: 信用リスク管理:正しいソリューション選びで差が出る

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