アジア貿易概要 – インド

インド 経済大国としての回復力と上昇力

インドは困難な2022年を乗り越え、世界の主要国の中で最速の成長を遂げ、英国を抜いて世界第5位の経済大国となりました。 インドは、強固なマクロ経済基盤、強固な外貨準備、健全な銀行・企業セクターを有し、ここ数年にない強さで外的ショックに立ち向かいました。このため、政策立案者は2022年前半の商品価格の高騰や、その後のインフレ圧力、金融引き締めサイクルに対してより柔軟に対応することができました。

一方、他の主要な中央銀行による積極的な利上げのロングテール効果により、輸出需要が弱まる中で、短期的にはインドの成長モメンタムが抑制される可能性があります。

しかし、長期的には、若く教育水準の高い労働者を多く抱える人口動態、成長する中間層、相対的に低いコスト基盤、開放経済、政治的安定性といったインドの構造的優位性が、その成長見通しを支えることになるでしょう。

インド概要

経済状況

インド経済は世界経済との一体化が進む一方で、国内要因による牽引が続いている。2022年のインドの力強い成長を支えたのは、国内消費と投資でした。 パンデミックから持ち越された潜在需要が引き続き民間消費を後押しし、政府のインフラ整備の推進により実質総固定資本形成は2桁の伸びを示しました。  

しかし、ウクライナ戦争の影響は、石油製品を中心とする商品輸入大国であるインドにも及んでいます。物価が高騰するにつれ、インドの財政と経常収支の赤字は拡大する傾向にあり、商品価格の変動期には、政府の国内補助金支出が増加し、より高価な輸入品が輸出収入を上回るためです。

2022年末時点で5,600億米ドルを超える強固な外貨準備、堅調な対内送金、インドが誇るITサービスに対する海外からの需要が、経常赤字への影響を緩和するのに役立ちました。  

一方、インド準備銀行が金融引き締めに慎重な姿勢を示したことで、企業が経済活動を支えるための信用へのアクセスが継続的に確保されるようになりました。最近の改革の結果、銀行システムはより質の高い資産を保有するようになり、商業銀行の信用成長率は、利上げにもかかわらず2桁を維持しました。産業部門向け与信は、金属製品および建設部門で顕著に増加し、コビド以前の水準を上回りました。また、住宅ローンも増加しました。

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最近の改革の結果、銀行システムはより質の高い資産を保有するようになり、商業銀行の信用成長率は、利上げにもかかわらず2桁を維持しました。

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インドの今日の回復力にとって極めて重要なのは、ナレンドラ・モディ政権が約10年にわたって実施した、ビジネスに優しいさまざまな金融改革とイニシアティブです。これには、インドの銀行が不良債権を一掃して資本を増強し、バランスシートを強化した倒産・破産改革、国民の金融サービスへのアクセスの拡大、生体認証IDシステム「Aadhaar」、デジタル決済の急速な普及、家計貯蓄の生産的投資への大規模転換、これまで外国投資家に制限されていた産業（航空宇宙など）の開放、国内の製造部門強化に向けたMake in Indiaの推進が含まれています。

さらに、インドは、世界の混乱、特に中国からのサプライチェーンの転換から生じる機会を利用するのに適した立場にあります。例えば、アップル社は2022年、それまで中国の工場で生産していた最新のiPhoneの生産をインドで開始するという画期的な動きを行いました。 外国からの直接投資はインドへの流入が続いており、主に製造業、コンピューターサービス、自動車、貿易、金融サービス分野への流入が多い。

生産連動型インセンティブ制度など、企業が国内で製品を製造・組立することを奨励する政府のインセンティブ、継続的なインフラ投資、主要市場との自由貿易協定は、同じグローバルブランドを誘致しようと競争する他のアジア経済圏に対してインドを優位に導いています。

課題・リスク

短期的には、世界経済の変動は、インドの国内での回復力を試すことになる。インドの主要貿易相手国の景気後退は、インドの輸出業者とそのサプライチェーンに問題をもたらす。  

外需の弱体化により、企業はより厳格な資金・信用リスク管理を実施する必要があるかもしれません。インドの企業は、顧客をサポートし維持するために、信用取引を提供したり、支払いの柔軟性を高めたりしてきました。しかし、Atradius Payment Practices Barometerによると、売上債権回転日数の悪化が顕著であり、2022年には、特に供給の途絶えた耐久消費財セクターで債務不履行や不良債権が増加しました。 

金融システムには十分な流動性があるものの、一部の企業は依然としてエピソード的な資金制約を経験する可能性があります。インド企業が、売掛金の現金化などバランスシートの資産を活用する能力は、事業拡大や技術革新に資金を供給し、グローバル市場で競争力を維持するために重要です。このような要因に対処するため、企業は事業継続性を保護し、投資資金を確保するために、債権回収や取引信用保険のソリューションを提供するグローバルなソリューションプロバイダーにますます目を向けるようになっています。

インドに製造拠点を作ろうとする外国企業の視点から見ると、インドの製造エコシステムにおけるギャップは、例えば、商品をより速く市場に運ぶという点で課題となり得ます。近年、輸送システムは大きく進歩しましたが、ファーストマイルとラストマイルの物流接続の問題は残っています。また、付加価値の高い製造活動では、適切なスキルを持つ労働者の不足に直面する可能性があり、企業は研修に投資する必要があり、それが人件費に加算されることになります。  

世界的なビジネスのしやすさランキングでは改善されているものの、インドでは官僚的な遅れが依然多くなっています。契約履行に関する紛争は、先進国市場よりも裁判所の判断に時間がかかり、主要な資本配分の決定を遅らせる可能性があります。このようなジレンマに陥っている企業は、現地の規制についてアドバイスができ、紛争解決の現場での経験が豊富な組織と提携することが有効であります。ビジネス関連の国内法の改正には議会のコンセンサスが必要であり、その合意形成には何年もかかる場合もあります。

経済見通し

2023年のGDP成長率は4％超と緩やかになるものの、インドは世界経済における明るい話題であり続けるでしょう。インドの成長は先進国や世界平均を上回り、主要輸出産業であるITと医薬品は引き続き堅調で、前者は2023年に19%の成長が見込まれます。

国内では、政府が計画しているインフラ投資の拡大が追い風となり、経済全体に乗数効果をもたらすと思われます。 また、世界的な商品価格の安定とインフレ率の緩やかな上昇の兆しは、中央銀行が他の市場よりも早く金利引き締めサイクルを終了する道を開くと思われます。

長期的には、インドの経済上昇は、14億人の市場規模、教育を受けて技術に精通した若い労働者の人口増加、拡大する中間層、比較的低い生産コスト、政治的安定、市場志向の経済といった構造的優位性によって維持されると予想されます。

インドが世界的に重要視されるようになれば、その産業界にもチャンスが生まれます。企業は、急拡大する新興国市場で事業を展開する際の典型的な課題を克服し、時代を先取りするために、貿易信用リスクなどのビジネスに不可欠な問題を管理するために現地の専門家に頼るなど、明確な成長戦略を持つことによって、世界の次の「成長のエンジン」とともに繁栄することができます。

本記事は、以下のアトラディウスの専門家の見識に基づき作成されたものです。Arun Soundarajan（インド地区マネージャー）、Karishma Suvarna Gadia（インド地区コマーシャル責任者）、Meghna Nair（インド・リスクサービスヘッド）。

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