アトラディウスの倒産アウトルックによると、2023年の倒産件数は世界で32%急増した。
パンデミック後の世界的な景気回復は、頑強な高インフレと、早急な金利引き下げに消極的な中央銀行の慎重姿勢に阻まれ、勢いを失いつつある。
さらに、銀行が融資基準を厳格化し、資金バッファが不足する中、企業が正常な成長期に戻ることは困難である。経済状況の変化にうまく適応している企業もあれば、生き残るために苦闘している企業もあり、これはアジア太平洋(APAC)をはじめとする世界中の倒産動向に反映されている。
APACの企業にとってはさらに悪い状況で、40%以上の上昇に直面した。当社の調査によると、悪化の大部分は金融危機後の正常化プロセスの一部であり、安定に向かう傾向にあるが、企業はまだ危機を脱していない。
アジアの「不利にあるニューノーマル」
現在の経済環境で倒産の可能性を高めている主な要因は2つある。ひとつは、パンデミック時に企業を支援するために導入された財政支援を政府が徐々に撤回していることだ。この動きは、この生命線だけに頼っていた企業にとっては存続の危機となる可能性がある。
パンデミック時代の景気刺激策が企業を下支えしたため、ほとんどの国で2022年の倒産率は低かった。しかし、その支援が打ち切られ始めると、2023年にはオーストラリア、日本、香港などの市場で倒産率が上昇した。
韓国と日本の企業は特にゾンビ企業になる危険性が高い。平時であれば債務不履行に陥っていたが、パンデミック時代の政府の支援によって救われた企業と定義される。実際、我々の調査によれば、これらの市場の企業は2022年と2023年に、パンデミック以前の水準と比較して、持続的に高いデフォルト率を記録した。
特に日本では、2019年の水準と比較して2023年に債務超過が急増した。この傾向は、パンデミック時に政府が「ゼロ・ゼロ」ローン(中小企業が無担保で借り入れでき、政府が3年間の利息を負担する)を提供し、多くの中小企業(SME)の借り入れを容易にしたことに起因すると考えられるが、現在は金融支援からシフトしている。 しかし、倒産件数はピークを迎えているようで、2024年から2025年にかけて減少に転じると予想されている。
シンガポールも2024年と2025年には、低水準からではあるが、倒産件数が大幅に増加し、パンデミック前の水準に正常化すると予想される。2024年以降は、中小企業を含むあらゆる規模の企業が新たな状況に適応していくため、債務不履行に陥りやすい企業の影響は限定的なものになると予想される。
もちろん、コロナ時代の政府支援の廃止だけがデフォルト水準上昇の原因ではない。サプライチェーンのボトルネック、金融引き締め政策、地政学的対立の継続など、現在の経済状況は、倒産率が高水準で安定する可能性がある。IMFは2024年にアジアの景気拡大が加速すると予測しているが、保護主義的な貿易政策がこの地域の輸出志向経済に悪影響を及ぼすリスクがある。一次産品価格の上昇に煽られたインフレは、域内成長のもうひとつの原動力である内需も弱めるだろう。
見通しは明るいか?
しかし、アジア太平洋地域全体の成長見通しは、依然として明るい。2024年の世界の倒産件数は前年比16%増となり、2023年の半分になると予想されるが、アジア太平洋地域の倒産件数は2%減少すると予想される。地域全体としてはより安定的に推移するものの、欧州や英国の一部の市場よりは時間がかかるかもしれないが、正常化の傾向は続くと予想される。
今後数年間は、経済的な課題や将来の危機を乗り切るだけでなく、世界経済のパワーバランスが東側にシフトするにつれて訪れるであろうビジネスチャンスを生かすことのできる、より健全な企業が残ると予想される。
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