アジア太平洋地域の主要市場では、サプライチェーンの混乱、商品価格の高騰、経営破綻の危機が続いており、今後、厳しい状況に直面する企業が増えると思われます。
こうした経済状況では、堅実な支払い実績のある顧客であっても、債務を履行できなくなる可能性を考慮しておく必要があります。サプライヤーにとって、経済的な苦境に立たされる時期は、新規顧客と既存顧客の両方に対する与信管理プロセスを戦略的に見直すきっかけとなるはずです。この機会に、売掛金管理の見直しや更新を行い、問題を早期発見し、不測の事態を回避するための対策を講じることをお勧めします。
取引リスクを最小限に抑えるには、継続的な取引先管理が最善策です。しかし、実際にどうすれば良いのでしょうか?ここでは、厳しい経済状況下で信用リスク管理の改善を図る企業にとってのベストプラクティスのアプローチを紹介します。
新規顧客の評価に関しては、正式な信用調査を実施することをおすすめします。これには、企業の財務状況、業界の実績、事業展開している国の見通しなどの情報収集が含まれます。また、見込み客の支払い行動に関する見識を深めることが理想的です。定期的に支払い遅延が発生していませんか?
このような財務状況に関する情報は、世界中どこでも入手できるとは限りません。企業に対して財務情報の公開を義務付けている国もあれば、義務付けていない国もあります。アジアでは、財務情報の入手や検証が困難な場合があります。
そこで、信頼できる国際取引信用保険会社が貴重な存在になるのです。優れた信用保険会社は、信用リスクを軽減する保険商品だけでなく、世界中の数百万の企業の支払い状況などの財務情報にアクセスすることができます。
見込み客の信用リスクのレベルが確認できたら、リスク管理の次のステップは、適切な支払条件を設定することです。 ここで重要なのは、営業チームと与信管理部門が提携して作業することです。企業間信用は貴重な営業ツールであり、顧客の競争力強化を支援します。しかし、同時に企業にとっては、不払いのリスクを負うことにもなります。供与する期間が長期化すると、その分リスクも増えます。一部の企業は、新規取引については現金払いのみとし、関係が確立された後、信用取引に移行するという条件を設定しています。また、当初から信用取引を拡大したいという企業もあるでしょう。また、個々の市場やセクターでは、一般的に認められた条件が均一的に設定されています。顧客のリスクのレベルを評価した上で、状況に応じた条件を適用する必要があります。
投資商品の「過去の実績は将来の実績を示すものではありません」という警告と同様、顧客の信用度を監視する必要があります。企業、業界、事業を展開する国を定期的に評価することで初めて、その企業の支払い能力を知ることができます。業種や市場に応じて、毎月または四半期ごとに信用リスク評価を実施するのが理想です。(財務の健全性診断方法については、こちらをご覧ください)
通常、信頼できる顧客に支払い遅延が発生するようになった場合、企業の監視や信用リスクの把握が必要だというサインです。たとえば、サプライチェーンが寸断された国、あるいは需要が減少した業界で事業を行っている場合は、決済能力に影響が出る恐れがあります。(売掛金を管理する際のヒントについては、こちらをご覧ください)
滞納のリスクがある顧客を特定したら、不良債権の発生を最小限に抑えるための対策を講じるのはサプライヤーとして当然です。たとえば、現金または担保付きの支払い条件への移行が考えられます。また、顧客のキャッシュフローが短期的には問題があるが、長期的な信用情報には問題がない場合は、請求書の支払い期限の延長を提案することもできます。
どんな企業であっても、経済状況や取引状況が厳しい時期は回避できません。サプライヤーとして重要なのは、潜在的な問題を発見し、手遅れになる前に解決策を見つけるためのプロセスを備えていることです。
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